2007-09-18

LCAのための準備のプロセス(三箇牧)


今日は、授業だけでも、もちろん学ぶことは多かったのですが、さらに、放課後に15名ほどの教師がハムゼのために集まってディスカッションの時間をとってくださいました。

その中でハムゼが疑問に思っていたいくつかの点について、質問し、理解を深めることができました。


ハムゼの質問・疑問点
1) 分類をさせている授業をみて、とても印象的でした。分類をいうのは、高次思考能力を育成するための大切な学習の活動の一つです。また、社会の授業でも、シンキングツールを利用したワークシートで、生徒の思考を支援している場面がみられてとても興味深かったです。このように、生徒の高次思考力の育成を目指すような取り組みもしくは、その他のシンキングツールなどはありますか?あればみせてもらいたいです。

→(教師の答え)実際シンキングツールを使っているわけではなく、教師が自分の経験知から、どのようなステップで生徒に考えさせればいいかを考え、それをワークシートにしているだけです。ワークシートは基本的には、作ったものは学年の先生同士で共有したり、前年度の先生から引き継いでもらったりして利用しています。


2)前回、西田先生の数学の授業をみて、デジタルコンテンツを非常に上手に使われていると思いました。このようなデジタルコンテンツを準備するのはきっと大変だと思いますが、準備としてどのようなことをされていますか?生徒にとって良いとされる教材をどのように確保するのですか?

→(教師の答え)高槻市が提供しているコンテンツもあれば、インターネットから教材をダウンロードすることもあります。今日本ではたくさんのデジタルコンテンツがあるのでそれを利用することができます。ただ、インターネットから教材を探すとなると、あまりにも情報が多すぎるのでなかなか「適切な」教材を選ぶのは困難です。そこで、教育関係の雑誌の付録についているCDにあるデジタルコンテンツや、雑誌などに記載されているURLをたどって、捜すことが多いです。また、Y先生といって、学年ごとに利用できるデジタルコンテンツをフォルダにまとめてくれる先生がいます。そのため、彼が見つけてくれたデジタルコンテンツを利用することも多いです。また、他の先生がいい教材を見つければそれはみんなで共有します。


3)Y先生といいましたが、どういう先生ですか?

→(教師の答え)担任を持っていないのですが、ICT教育一般の担当をしてくれます。コンピュータを使う授業があれば支援に入ってもらったり、各学年で利用できそうなデジタルコンテンツをみつけて、それをまとめてくれたりしています。彼のような人もいますし、教師同士の情報交換や情報共有も多いので、スムーズにシステマティック準備をすることができるようになっています。


4)シリアでは、教師は年間計画以外にも、毎回の授業の計画を作って校長先生にみせ、校長先生がOKを出せばその授業をすることができます。日本ではどのように授業案を作っているのですか?

→(教師の答え)日本では文部科学省が学習指導要領を出しているのである程度は、その枠組みにしたがって授業をします。しかし、もちろん、生徒の基礎学力や状況によって内容を工夫する必要があるので、教師は単元ごとに授業案を作ったりもします。


5)西田先生の授業で、とても興味をもったのは、メリハリのつけかたです。授業でICTを使うとなると多くの課題があると思います。たとえば、準備や、生徒がICTに慣れない、集中しない、などがあると思います。どのように授業を工夫されているのですか?

→(教師の答え)工夫する点として

①子どもたちがどこまでできているか隣の子同士で確認させるなど、必ず目標が達成されているかどうかのチェックを行います。どこかでチェックをする時間をとることで、だいぶスムーズにいくことができます。

②子どもたちのやる気を維持するため、様々な工夫を入れます。たとえば、折り紙をいれたり、考えて話させたり、プロジェクターを使ったり。LCAをするというよりもむしろ、その都度、子どもたちがどのようにすればやる気をもって取り組めるのかを考えてTCAかLCAかを決めます。

三箇牧小学校からの教師からの質問
1)パレスチナ人としてアイデンティティを大切にしなければいけないのにもかかわらず、多様な価値観や視点を育成するLCAを取り入れることで、不都合はないのか。
→(ハムゼの答え)アイデンティティやアラブとしての意識や価値観を維持することの責任はすべてカリキュラムが担っています。そのためその教え方は、TCAであろうとLCAであろうとかまわないのです。つまり、教え方に限り、LCAを採択したいと考えています。それに、アイデンティティの問題に焦点を当てるのであれば、子どもたちは幼いころからパレスチナ人としてのアイデンティティを家族教育の中でしっかりされているので、その点については問題がない。それに、政策としても、UNRWAのすべての学校の名前にパレスチナの地名や川や山の名前をつけていて、子どもたちが何かの形でパレスチナのことを自然に学習できるような工夫もしています。

つまり、質問の意図は、パレスチナ人の子たちが、自分たちに対して迫害しているイスラエルやアメリカに対して寛容な心や、多様な価値を持ち受け入れても大丈夫なのか?ということに対し、ハムゼは、アラブとしての意識を維持するのは、学習方法ではなく、カリキュラムであると答えていた。私はここに少々疑問を感じた。LCAというのは、学習方法、学習内容そして評価を切り離して考えることはできない。その点について後でハムゼとディスカッションしなければいけないと思った。

2)ハムゼが考えているLCAとは?日本のLCAとは違うのでは??
日本では、何か学習目的があって、それを達成する方法として、TCAやLCAを組み合わせて授業を設計する。UNRWAの学校はどうか?
→(ハムゼの答え)UNRWAの学校でLCAを促進する際、授業の中に15分でもいい、5分でもいいから必ずLCAの学習方法を取り入れるように指導しています。その背景として、伝統的な教授法に固執している教師は、教科書に書いてあることが知識のすべてであると考えています。しかしながら、生徒たちは家でも地域でも様々なことを学び、様々な情報を学校に持ち込んできます。教師が、教科書だけの情報を扱うのではなく、授業の一部に生徒が持っている知識を活用するような活動を私たちはLCAであると考えています。そうすることで、授業で学習したことが、自分たちの生活にも活かされると信じています。

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